東京地方裁判所 昭和56年(ワ)11721号・昭55年(ワ)3781号 判決
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【説明】
原告は、本訴請求原因の一部として
「5 被告横川は、被告会社の代表取締役であり、訴外株式会社横川の代表取締役でもある。ところで被告会社は被告のダミーである。すなわち、被告会社はYシャツ製造に関しては人的・物的設備は全く有しておらず、本件の様な請負契約によつて仕上つた製品を別会社である訴外株式会社横川に販売させているものであり、被告会社、訴外株式会社横川は被告横川のダミーで、形式上法人格となつているに過ぎない。被告会社に対する本件契約に基づく請負代金債権は形式上被告会社に請求せざるを得ないが、被告会社の資産は皆無であるので、被告会社の法人格を否認し、被告横川に対して右債権の支払を求める。
6 仮に被告会社の法人格が認められたとしても、被告横川は当初から請負工事代金相当の利益を詐取しようとして原告と本件契約を締結し、原告に請負工賃相当の損害金を与えたのであるから、原告は被告横川に対し民法七〇九条に基づき右請負工賃相当額の損害賠償を求める。」
これに対して、被告は、反訴請求の原因として、次のとおり主張した。
「3 また、原告は、被告会社について本訴訴状に「被告会社は、被告横川のダミーである」とか「人的物的設備は全く有しておらず」、「資産は皆無」、「被告会社の債権者はその回収ができずにいる」等虚偽の事実を摘示している。
4 さらに、原告は被告横川について「請負工事代金相当の利益を詐取しようとして」「民法第七〇九条の不法行為」をしたと虚偽の事実を摘示している。
5 原告は訴訟代理人をして被告らに対する虚偽の事実を法廷において陳述させ、ひいては被告らの名誉、信用を毀損した。」
【判旨】
3 請求原因3、4の事実について判断するに、そもそも、一般に、全く虚構の事実をあげて故意または過失により、相手方に対し不当な訴訟を提起したときは、右訴の提起それ自体が不法行為となることは勿論であるが、自己の主張を裏付け得る一応の根拠に基づき裁判所の判断を求めるため具体的事実を掲げて訴訟を行なう限り、それは国民としての当然の権利行使というべきである。
これを本件についてみるに、本件事実関係は前記認定のとおりであつてこの認定事実と<証拠>を総合すれば、原告の訴状、準備書面記載の被告らに対する主張内容は原告の訴訟上許された当然の権利行使の一場面にすぎないものというべきであつて、何らの証拠に基づかない誹謗のためのみにする主張でないことは明らかであるから不法行為の要件を欠くものといわざるを得ない。従つて被告らの原告に対する請求はその余の点につき判断するまでもなく失当である。
(根本久)